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映画音楽のこと [音楽]

 先週末、家内が見ているテレビから「Stand by me」が聞こえてくるのには驚きました。映画の一場面かと思ったのですが、英国の結婚式の中継放送でした。


 この曲を聞くと、少年たち 4人が線路を歩いている映像が思いうかびます。あの映画のころ、わたしのこどもたちもちょうど、同じような年頃でした。


 映画の中で流れる音楽は、ほとんど映画を見ないわたしでも、いろいろ思いだします。古くは『太陽がいっぱい』や『ロミオとジュリエット』のテーマ曲・・・。 意外だったのは『鉄道員 ぽっぽや』で高倉健が、江利チエミのデビュー曲「テネシー・ワルツ」を口ずさむシーン。


 川本三郎は <高倉健は、いつも詫びていた。「すまない」と頭を下げていた。こんなにも、罪責感を心に抱えたヒーローを演じた俳優は、日本にも外国にもいないのではないか。> と書いています。


 是枝裕和監督の映画がカンヌで受賞しましたが、映画を観る根気が薄れているので、たぶん見ることはないでしょう。ときには、映画の本を読んだり、映画音楽を聴いたりすることはあるでしょうが。




 

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神話の住人 [読書]

 新宮市の熊野速玉大社の境内に、佐藤春夫の詩碑があります。「望郷五月歌」の一節が陶板に焼き付けられています。近くには彼の旧居も移築されています。


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   塵まみれなる街路樹に

   哀れなる五月来にけり

   石だたみ都大路を歩みつつ

   恋しきや何ぞわが古郷

   あさもよし紀の国の

   牟婁の海山

   夏みかんたわわに実り

   橘の花さくなべに

   とよもして啼くほととぎす

   心してな散らしそかのよき花を

   朝霧か若かりし日の

   わが夢ぞ

   そこに狭霧らふ

   朝雲か望郷の

   わが心こそ

   そこにいさよへ

   空青し山青し海青し

   日はかがやかに

   南国の五月晴こそゆたかなれ


 西脇順三郎は「文人佐藤春夫」という文章を書いています。


 <五月頃になると南仏をおもわせるマロニエの樹に花が咲き、七、八月になるとノウゼンカズラの花が咲く。 この家の主人は門弟三千人をようしたという文人であった。>


 新宮という町は背後に熊野の山々を背負い、南は太平洋にひらけていますが、隔絶された地域の雰囲気があり、神倉神社のお燈まつりなど、神話的な世界の匂いが漂っています。 佐藤春夫にもそんな種族のしるしが感じられるかもしれません。





  

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初夏になって [雑感]

 八十八夜も過ぎ初夏となりましたが、今日は一日、雨のようです。 連休にはこどもたち一家が帰省してきたので、家にも活気がありましたが、また静かな生活にもどりました。どういう訳か今朝は、久しぶりに腰痛がでてきました。


 10歳の男児が将棋を挑んできたので、もう勝てないかもしれないと思いましたが、2連敗のあと、2連勝して面目を保ちました。


 6歳の男児は、もっと足の爪は短く切れとか、この顔のブツブツは何だとか、いろいろ注文をつけてきます。見ていると兄弟喧嘩をしなくなっており、それぞれに学習しているようです。


 3歳の女児は、アカンベェをしたり、男児たちの行動に興味を示したり、もう少しで一緒に遊べそうです。


 こどもの頃に、共にまみれて遊んだという記憶は、重要です。何十年たっても親愛の情は薄れません。生きてゆく上で、もしかしたら最も大事な記憶かもしれません。


 家内と二人、静かだとかいいながら、また日常にもどっていきます。


  谺(こだま)して山ほととぎすほしいまま (杉田久女)


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リュウと鳥 [読書]

 前回の「龍」と「竜」については(http://otomoji-14.blog.so-net.ne.jp/archive/20180423)、

やっぱり、高島俊男さんの『お言葉ですが・・・』(文藝春秋 1996年刊)に「龍竜合戦」という一篇がありました。 橋本首相が誕生したとき、朝日新聞は橋本龍太郎と書き、毎日新聞は橋本竜太郎と書いていて、不思議に思ったそうです。


 新聞社には、何か略字を使う社内規定があるようで、坂本竜馬とか芥川竜之介になるのかなとのことでした。ただ、数日後の毎日新聞に載った「サンデー毎日」の広告では橋龍になっており、村上龍対談坂本龍一というのもあったそうです。


 岩波書店は新聞社ではありませんが、なにか社内の決りがあって、芥川竜之介、橋本龍太郎になっているのでしょう。


 このあいだから読んでいる『目からウロコの自然観察』(中公新書)には、身近にあって知らなかったことが、たくさん書かれています。


 これからの季節、ツバメは軒下に泥で巣を作って、子育てしながろ暮らしているのかと思っていましたが、


 <街中で繁殖を終えたツバメは、秋に南国に渡るまでどこでどんな生活をしているのだろうか。まだわからないことが多いのだが、7〜8月の夕方、ヨシ原などに集まり集団ねぐらをとることがわかっている。数千、数万の大群が上空を乱舞し、一斉にねぐらに入るシーンは実に壮観である。>とのことです。


 著者は2015年8月24日、中央自動車道の談合坂サービスエリア(上り線)で、日没前後に数千羽のツバメが一気に、ケヤキの樹にねぐら入りするのを観察しています。


 サービスエリアにいた人たちは、ヒッチコックの映画「鳥」を一瞬、思いだしたかも知れません。



 

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キョーミと観察 [読書]

 文庫棚を眺めていて、ふと気がついたのですが、新潮も角川も文春も「芥川龍之介」なのですが、岩波は「芥川竜之介」です。 「竜」は「龍」の略字で、常用漢字なんでしょうが、文学賞も芥川龍之介賞だし、人名を略字にするのはどうかなと思います。


 岩波書店は「龍」という漢字は使わないのかというと、『橋本龍太郎 外交回顧録』という本を出版しています。最近は変えているのかと思うと、2010年に出たのも『芥川竜之介俳句集』(岩波文庫)となっています。


 こんな問題は高島俊男さんが、どこかで指摘しているのかも知れません。 森鷗外も鴎外になっているというのを読んだことがあります。 ネットの「青空文庫」は「竜」、「鴎」となっています。


 興味のあることには目がいきやすいですが、関心がないと、知らないで過ぎてしまうものです。 唐沢孝一『目からウロコの自然観察』(中公新書)には、身のまわりにある知らなかったことが種々とりあげられています。


 <ウマノスズクサの葉は、千切るとひどい悪臭がする。葉は毒性のあるアリストロキア酸を含む。葉の毒は、本来は虫に食べられないための防虫剤として機能している。ところが、長い進化の過程で、アリストロキア酸に対して耐性を獲得した昆虫が現れた。それがジャコウアゲハである。・・・幼虫は食草の毒を体内に蓄積し・・・毒蝶が誕生する。鳥やカマキリがこれを捕食して中毒症状を経験すると、二度と捕食しなくなる。>


 さらに、ジャコウアゲハの模様に擬態して、毒虫になりすまして生き延びる蝶もあるそうです。 ただ、ボーと景色を眺めていても分からない、植物や動物の営みが興味深く書かれています。




 


 

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街歩きの収穫 [音楽]

 先日、路地を歩いていると、すこし遅い桜が咲いていました。桜は晴れやかで、周囲を明るくします。ぶらぶらと足に任せて角を曲がったり、橋を渡ったりしていると、CD 屋さんがありました。


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 のぞいてみると、店主の好みなのか、録音の古いのが並んでいました。いろいろ棚を眺めていると、「こちらにも有りますよ」とおばさんが声をかけてきます。


 時間がたつにつれ、何か買わなければ・・・と焦った気持ちになってきます。何回か棚を見ていると、オットー・クレンペラーの指揮のが目についたので、二枚買ってきました。


 帰って、聴いてみると、すみずみまで神経の行き届いた、身にしみる、いい演奏でした。FM 放送もなかったころ、クレンペラーの演奏はよくラジオから流れていました。


 彼は逸話の多いひとで、寝タバコで大やけどをしたり、女性問題でケガをしたり、有名なスキャンダルがたくさんあります。 だのに、なぜこんな神々しいまでの演奏ができるのか、不思議に思うほどです。


 そういえば数日前、映画「アマデウス」のミロス・フォアマン監督の訃報が、新聞に出ていましたが、モーツァルトも逸話の多いひとだったようです。 


 クレンペラーもフォアマンもアメリカへの亡命・脱出を余儀なくされた人たちのようです。 週末の嵐で、路地の桜も花筏になってしまったことでしょう。




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映画の白いタンポポ [読書]

 たまたま、川本三郎の新刊『映画の中にある如く』(キネマ旬報社)を読んでいると、広島・呉を舞台とするアニメ映画「この世界の片隅に」を話題にした項に、こんな文章がありました。


 <この映画で呉には、白いタンポポがある、と知った。普通、タンポポの花は黄色い。しかし、九州の柳川では白いタンポポが咲く。だから北原白秋は「廃れたる園に踏み入りたんぽぽの白きを踏めば春たけにける」と詠んだ。呉でも、白いタンポポが咲いたのか。>


 どんな場面なのかは分かりませんが、タンポポの白さが、北原白秋の短歌の記憶を呼び覚ましたのでしょう。 白秋にはタンポポのでてくる詩もあります。


 川本三郎が「キネマ旬報」に書いているコラム「映画を見ればわかること」のシリーズは楽しみにしています。今回で五冊目になります。 ほとんどは観たこともなく、観ることもない映画についての話が、なぜおもしろいのか不思議ですが、旅人に、知らない土地の話を聞くようなものかもしれません。



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タンポポの話 [雑感]

 <長崎のタンポポは白っぽい>と長崎生まれの評論家・山本健吉が書いています。四国九州地方にてはシロバナタンポポのみを見る処あり、とのことです。いまはどうかわかりませんが・・・。


 上方落語に「西行鼓ケ滝」というはなしがあり、そこでは西行法師が「伝え聞く鼓の滝を来て見れば岸辺に咲けるたんぽぽの花」と詠んだことになっています。


 タンポポはつぼみの形が鼓に似ていることから、つづみ草と言われていたそうですが、こどもたちは、鼓の音からタンポポと呼んだそうです。


 西行はその夜、宿をかしてくれたお礼に、山家の住人に、先ほどの歌を披露します。すると爺さんは「初句は鼓だけに、音に聞く、とした方が良い」といい、また婆さんは「第三句は鼓だけに、うち見れば、がいい」などと添削する。 西行は憮然とするが・・・


 ふと目が覚め、夢だったと気づく。「歌の上手と思い上がっていた、ばちがあたる」と西行は恐れる・・・「鼓だけにバチはあたりません」というオチがついています。


 兵庫県川西市をはしる能勢電鉄に「鼓滝」という駅があるそうです。



 

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