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駿河のくに巡り [徘徊/旅行]

 今朝はセミが、かよわく鳴いていました。去年は 7月9日が聞き始めだったので、ほぼ同じころです。今年はつい先ごろ梅雨入りしたばかりですが、セミの声を聞くと、もう夏だと思います。


 先日、ふと思い立って静岡へ出かけました。駅前からバスに乗って御前崎の先端に立ちました。梅雨空で風もあり、海は岬の前だけ荒れ、波しぶきが顔に当たります。


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 階段を上がると灯台があります。明治 7年に建てられたそうです。そばに「喜びも悲しみも幾歳月」の歌詞の碑がありました。1957年の木下恵介監督の映画の主題歌です。小学生のころ、母親に連れられて隣町の映画館で観た記憶があります。


 翌日、大井川を見てみようと、東海道本線・金谷から、大井川鐵道に乗りました。線路は大井川に沿って南アルプスの方に登って行きます。1時間乗っても大井川の川幅は広く、川沿いの谷には茶畑が続きます。


 金谷の東隣の島田には、川越えの川会所や宿場の名残のような町並みがありました。この広い大井川を肩車されて渡ったのかと、川堤にに立って向こう岸を見渡しました。


 少し時間があったので、清水から三保の松原へ行ってみました。砂浜に出ると、海の向こうに伊豆半島が微かに見え、松原の向こう雲の上に、わずかに富士山が頭を出していました。





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新幹線から見える [徘徊/旅行]

   新幹線は車窓の風景を眺めるのには適していません。東海道もいつまでたっても、富士山くらいしか、見たという実感がわきません。いろんな物が見えているはずなのに・・・。


 一坂太郎『カラー版 東海道新幹線歴史散歩』(中公新書)をみると、大井川は新大阪駅から 325キロ・1時間26分、東京駅から 190キロ・58分にあるそうです。


   熱田(宮宿)から桑名へ海上を渡る「七里の渡し船着場跡」は新大阪駅から 180キロ・53分、東京駅から 334キロ・1時間31分で E席側に見え、その後ろに熱田神宮の森が見えるそうです。


 新幹線は移動の手段としか思えないのですが、あらかじめこの本で時間と、どの席側かを調べておけば、いろんな物が見えるようになりそうです。移動中の退屈しのぎによいかもしれません。




 

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峠越えの趣味 [徘徊/旅行]

 柳田國男「峠に関する二三の考察」を読んでいると、近江は四境ことごとく山なので、隣国へ越える五十二の峠路があると書いてあります。山城へ十八、伊賀へ八、伊勢へ九・・・といった具合です。


 山の鞍部を越えていくのが楽ですが、そんな部位を古くは「たわ」もしくは「たをり」と言ったそうです。今日の「たわむ」と語源を同じくし、柳田は「たうげ・峠」もそこから来ているかもしれないと述べています。そういえば昔、「田和」さんという同僚がいたのを思い出します。


 峠道は新しい道が開発されると、すぐ廃れてしまいます。まず沢を登る道ができて、次に物を運ぶに便利な勾配のゆるやかな道ができ、トンネルができてといった具合です。その都度、村落や茶店が古い道に取り残されます。


 「山岳会」に対抗して、峠越えの楽しみを報告し合う「峠会」を作りたいと、明治43年(1910)、35歳の柳田は冗談めかして書いています。


  山路来て何やらゆかしすみれ草 (芭蕉)




 

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散歩の道すがら [徘徊/旅行]

 ぶらりと散歩するのに、ちょうど良い天気なので山村を少し歩きました。出会うのは欧米人ばかりで、日本人を含め東洋人にはすれ違いません。何か趣味の違いでもあるようです。


 以前、やや太り気味のひとに「夕食後に歩いてみたら」と勧めると、「夜にその辺を出歩いていると、不審者と間違われる」とのことでした。用もないのに散歩などしているのは変なヒトという、まっとうな感覚です。


 国木田独歩『武蔵野』は明治31年の発表ですが、落葉樹林を散策する楽しさを発見しています。独歩は中国地方でこども時代を過ごしているので、武蔵野の広葉落葉樹林が目新しく感じられ、ツルゲーネフの小説の舞台が連想されたようです。


 当地は、南国ですので雑木はツバキ、ウバメガシといった照葉樹が多く、冬でも落葉が少なく、武蔵野とは風景が異なります。関東から来たいとこを山村に案内すると「緑が濃いなー」と驚いていました。


 この辺りでは、昔はツバキの葉で刻みタバコを巻いて喫う風習があったそうです。ウバメガシは備長炭の原料です。 変なヒトと思われないように、用事でもあるような顔をして、そそくさと歩いたほうがいいかなと、思ったりします。



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春の岬 [徘徊/旅行]

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 イカナゴ漁が解禁になりました。ここ数年は不漁続きですが、今年はどうなんでしょう。瀬戸内海の春の食べ物です。食べごろな大きさなのはいっときなので、時期には、毎日のように食べました。茹でてすぐのものか、茹でて数日、干したものがほとんどでした。


 むしろに展げて乾している中には、小さなタコも混じっていました。半乾きの物を手のひらに取って、おやつとしても食べました。釘煮という食べ方は大人になるまで知りませんでした。


 先日、紀淡海峡の見える岬に行ってみましたが、海は霞で、前の島々はぼやけていました。友ヶ島へは渡ったことはありませんが、廃墟となった要塞があるそうです。


  春の岬 旅のをわりの鷗どり

  浮きつつ遠くなりにけるかも


 昭和二年、二十七歳の春、三好達治は当時伊豆湯ヶ島に転地療養中の梶井基次郎を見舞って、そのあと下田から船で沼津へ渡ったらしく、その船中での感興だそうです(安東次男『花づとめ』中公文庫)。「鷗どり」は湯ヶ島に残してきた梶井の映像で・・・「春の岬」は叙景歌ではない、と安東次男は記しています。



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いざ鎌倉 [徘徊/旅行]

 先日、鎌倉へ出かけてきました。天気が良くて温かで、江ノ島の向こうに箱根や富士山が見渡せました。中学の修学旅行以来なので、55年ぶりです。鎌倉は鉄道の幹線からはずれているので、目的にしないと寄りにくい場所です。


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 鶴岡八幡宮や長谷大仏はむかしの記憶がかすかに残っていました。腰越川という標識をみると源義経のことが思いだされます。それにしても頼朝は何故こんな狭い場所に幕府をひらいたのか不思議です。

 

 昭和12年9月24日、中原中也はともに鎌倉に住んでいた小林秀雄を訪ね、詩集『在りし日の歌』の清書原稿を託しました。いろいろなことがあった二人の最後の語らいでした。


 坂の多い町なのでつま先が痛くなります。小腹が空いたので、店を覗くと、どこもシラス丼がおすすめのようでした。磯辺餅をいただきました。


 今年はどんな年になるのか・・・犬のように嗅覚に導かれて、さまようのもいいかもしれない。ことしは古稀になります。

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路地をさまよう [徘徊/旅行]

 知らない土地をぶらぶらと歩き巡るのは楽しいものです。迷子になりながら、かといって冒険というほどでもなく、ひとのにおいのする路地や道を気ままにぶらつく。


 運動のためではなく、調査でもなく、目的もなく、巡礼でもなく、行き当たりばったりにほっつき歩く。だいたいあの辺りとだけ決めて。


 どこへ行ってみたいか・・・山陰の益田あたり、国東半島、竜飛崎、出雲崎、ポルトガル、ニューヨーク、バイカル湖、清水あたり、赤穂、小樽・・・いつでもでかけられそうで、そうでもない。ちょっとしたはずみが必要です。


 五味文彦『日本の歴史を旅する』(岩波新書)は大津、日向、筑波山麓、小浜、佐渡、讃岐など 16の地域を人、山、食、道の四部に分けて、そのあたりの歴史的な成り立ちを概説していて、局所的な風土のおもしろさが浮かび上がってきます。


 <小浜は遠く異国や蝦夷地とも結ばれていて、応永十五(1408)年六月には南蛮船が小浜にやって来て、小浜の問の本阿弥の家を宿舎となし、「日本国王」足利義満への進物として黒象一頭・山馬一隻・孔雀二対・鸚鵡二対などが贈られている>・・などという話が出てきます。


 何回か敦賀から小浜へ行って、花折峠を越えて京都に出たのを思いだします。久しぶりに若狭にもでかけてみたくなります。路地には伊勢エビの味噌汁のかおりが漂っています。

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柳川のウナギ [徘徊/旅行]

 福岡で集会があったので、足をのばして柳川まで行ってみました。天神から大牟田ゆきの西鉄に乗って 50 分くらいです。有明海に面しているようです。


 柳川駅の近くに、川舟の乗場があって、掘割りというか水路というかを、船頭が竹竿を操って 1時間ほど、ゆっくり流れてゆくと、旧市街に着きます。旧藩主の屋敷や北原白秋の生家があります。


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 白秋の実家は造り酒屋でしたが、火災で失われたのを再現したようです。中庭にはザボンが実っていました。川本三郎に『白秋望景』(新書館)という評伝があります。


 こどもの頃、母方の祖父は柳川が祖先の地だと言っていました。幕末に長崎へ行って、通詞になり、その後、神戸にやって来たそうです。今は柳川に付き合っている縁者はありませんが。


 昼には鰻のせいろ蒸しを食べました。タレを混ぜこんで蒸した鰻重といった感じです。掘割りにもウナギはいるようですが、出てくるのは他所のものだそうです。有明海が近いので、ムツゴロウとかワラスボ、クツゾコといった変わった魚の料理もあります。町をめぐる水路は有明海へ続いているそうです。



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風の盆 [徘徊/旅行]


 さそわれて富山から高山線で数駅、南へいった八尾(やつお)という山間の町へ行ってきました。「風の盆」とよばれ、毎年9月1日から三日間、少し遅い盆行事がおこなわれています。


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 水音のする、ぼんぼりの明かりの薄暗い坂道を歩いていると、越中おわら節が聞こえてきます。のぞいてみると人だかりがしていて、ほのぐらい神社の境内や、お寺の本堂で盆踊りが静々と舞われています。


 夜目、遠目、笠の内と言いますが、そんな感じです。町ごとに路地を流していくのに出会うこともあるようです。


 十数年前、髙橋治の『風の盆恋歌』(新潮社)を読んだ記憶があるのですが、内容は忘れました。彼の『蕪村春秋』(朝日新聞社)は映画に関係した人らしい映像的な蕪村の解釈が新鮮でした。また、小津安二郎『東京物語』の助監督を務めたことから小津の評伝も書いています。


 見物客は多いですが、車がまったく通らないので、露店などを見ながら歩いていると、初秋の夜風が心地よく感じられます。

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ねじ式まち歩き [徘徊/旅行]

 先週末は集会があって、広島へ出かけてきました。十数年ぶりでしたが、あらためて街中に川の多いのが新鮮でした。南北に六本流れているそうです。夕方、川沿いに歩いていると、記憶の風化にあらがうようにドームが対岸に見えます。


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 移動には市電が格安で便利そうです。旅行者なのか自転車も目立ちました。晩飯を食べようと、ふらふらしていると「金座」という地名に再会しました。五十年以上前に始めて来た時に憶えた名前です。あたりを見回すと、道の曲がりぐあいの記憶が蘇ってきます。中学生の自分に巡り会った気がしました。つげ義春の漫画のように。



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